Glossary

香水用語辞典

読んでいて出てきた言葉を、その場で引けるように。

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アコードAccord
複数の香料が溶け合い、元の素材が個別に聞き分けられなくなった状態の、一つのまとまった香り。素材の足し算の結果ではなく、分けて聞けなくなったところで名前がつく。
アブソリュートAbsolute
溶剤抽出で得たコンクリートやレジノイドをエタノールと混ぜ、冷却して固まった蝋を濾し取ってから溶媒を飛ばした香料。熱をほとんど使わないので、蒸留では壊れる成分や水に溶ける成分も残る。
アンフルラージュEnfleurage
精製した脂を塗ったガラス板に生花を並べ、花が放ち続ける香りを脂に吸わせる抽出法。熱を加えないため、摘まれたあとも香りを作り続ける花から時間をかけて集められる。
圧搾法あっさくほう
柑橘の果皮を機械的に押しつぶし、外皮に並んだ油胞から精油を搾り出す方法。熱を加えないので、生の皮を折ったときの香りに近いものが得られる。
閾値いきち
その成分を「これ以上薄いと感じ取れない」濃度の下限。値は成分によって桁がいくつも違うため、量の多さと匂いへの寄与の大きさは一致しない。
エクストレ・ド・パルファムExtrait de Parfum
香料の比率がもっとも高いとされる濃度区分。パルファムとも呼ばれる。アルコールが少ないぶん立ち上がりが穏やかで、肌の近くにとどまる傾向がある。
オーデコロンEau de Cologne
柑橘を主体にした軽い香りを指す区分。香料の比率は低く、まとまった量を使う前提の製品が多い。
オードトワレEau de Toilette
香料の比率がオードパルファムより低いとされる濃度区分。よく引かれる百分率は業界のおおよその慣習であって、国際的に決まった定義はない。
オードパルファムEau de Parfum
香料の比率がオードトワレより高いとされる濃度区分。この区分に法的な定義はなく、どの範囲をそう呼ぶかはブランドの判断で決まる。
オドフォンOdophone
香料を音符に見立て、高音部記号と低音部記号の二段の譜表の上に並べて示した一覧。譜面の上で和音になる香料を選べば調和する、という発想で提案された。
アランビックAlembic
蒸留に使う装置。釜で植物と水を熱し、上に伸びた首から立ちのぼった蒸気を管で冷やして液体に戻す。部品が少ないぶん壊れにくく、銅板と水さえあれば産地の畑のそばでも組める。
アブソリュート・ド・ポマードAbsolue de pommade
アンフルラージュで香りを吸わせた脂(ポマード)をアルコールで長時間かき混ぜ、低温で脂を分離してからアルコールを飛ばして得る香料。花を摘んでからここまで、火は一度も使われない。
香りのピラミッドかおりのピラミッド
香りをトップ・ミドル・ベースの三層に分けて示す図。層の重なりを表したものではなく、時間の経過を縦に描いたものである。
揮発係数きはつけいすう
香料が飛ぶ速さを表す指標。イギリスの化学者 W. A. ポーシェが 1955 年に 332 種の香料を 1〜100 の尺度で分類し、トップ・ミドル・ベースという区分に数値の裏づけを与えた。
嗅覚順応きゅうかくじゅんのう
同じ匂いを嗅ぎ続けると数分のうちに感じにくくなる働き。受容体の応答と神経の処理の両方が、一定の刺激に対して反応を下げていくために起きる。
嗅覚受容体きゅうかくじゅようたい
鼻の奥にあって匂い分子と結びつくタンパク質。ヒトで実際に機能しているのは約四百種と見積もられている。
組香くみこう
複数の香を順に焚き、その異同を聞き分ける香道の遊び。和歌や季節、物語を題にしたものが数えきれないほど作られてきた。
グラースGrasse
南フランスの町。もともと皮なめしと手袋の産地で、獣脂を扱う職人と、革の臭いを消すために香りを扱う職人が同じ場所にいたことから、香料の集積地になった。
源氏香げんじこう
五種の香木を五包ずつ、計二十五包用意し、そこから任意の五包を順に焚いて異同を判定する組香。参加者が書ける答案は五十二通りに限られる。
香気成分こうきせいぶん
匂いとして感じ取られる揮発性の分子。一つの天然素材にも多数が含まれ、その顔ぶれと比率が素材ごとの香りを決める。
香道こうどう
香木を焚いて味わう日本の作法。香木を楽しむ行為そのものは古いが、流派と作法をもつ「道」になったのは室町中期の東山文化のなかでのことである。
光毒性こうどくせい
特定の成分が皮膚についた状態で紫外線を浴びたときに、炎症や色素沈着といった強い反応が起きる性質。柑橘の圧搾油に含まれるフロクマリン類が代表的な原因になる。
香木こうぼく
樹脂を含んで香りを放つ木。沈香や白檀が代表で、香道では焚いて鑑賞する対象になる。
合成香料ごうせいこうりょう
化学合成によって作られる香料。天然にも存在する分子を作る場合と、天然には見つかっていない分子を作る場合の両方がある。
コホベーションCohobation
蒸留で分離したあとに残る水を釜へ戻し、繰り返し蒸留する操作。水に溶けやすい香気成分を取りこぼさないために行う。
コンクリートConcrete
花を揮発性の溶剤で洗い、溶剤を飛ばしたあとに残る蝋のように硬い塊。香気成分のほかに、花の表面の蝋や花びらの色素も一緒に含む。
官能評価かんのうひょうか
訓練を受けたパネリストの集団が、決められた語彙と尺度で香りを採点し、その平均と分散を統計的に扱う手続き。個人の感想ではなく、集団としての傾向を取り出す。
嗅上皮きゅうじょうひ
鼻の奥の天井にあたる数平方センチの粘膜。嗅覚受容体はここに並んでいて、匂い分子はこの粘膜に溶け込んでから受容体に触れる。
嗅球きゅうきゅう
嗅上皮の受容体が受け取った信号をまとめる中継点。ここから脳へ送られる。視覚や聴覚の信号が視床を経て大脳皮質へ届くのに対し、嗅覚の信号は記憶や情動に関わる領域へ比較的短い道筋で入る。
共感覚きょうかんかく
音を聞くと色が見えるように、ある感覚が自動的に別の感覚を引き起こす現象。少数の人に見られる。多くの人が共有している緩やかな結びつき(クロスモーダル対応)とは別のものとして区別される。
共溶媒きょうようばい
主となる溶剤に少量混ぜて、溶かせる範囲を広げるための補助の溶剤。超臨界二酸化炭素抽出では、無極性に近い二酸化炭素が苦手とする極性の高い分子を採るために、エタノールを数パーセント加える手が使われる。
クロスモーダル対応クロスモーダルたいおう
多くの人が共有している、異なる感覚のあいだの緩やかな結びつき。特別な体質を必要としない点で共感覚と区別される。香りを音の高さや楽器の種類に対応づける実験で、回答に一貫した傾きが見られる。
香害こうがい
柔軟剤や芳香製品、香水などの強い香りによって体調を崩すという訴えを指して、日本で近年使われるようになった語。公共施設や学校、医療機関で香りへの配慮を求める掲示も見かけるようになった。
水蒸気蒸留すいじょうきじょうりゅう
植物に水蒸気を通し、香りの分子を蒸気に乗せて低い温度のまま運び出す方法。釜を出た蒸気は冷却管で液体に戻り、比重差で精油と芳香蒸留水に分かれる。
水蒸留すいじょうりゅう
素材を水に浸したまま煮て蒸留する方法。蒸気だけを通す水蒸気蒸留に対し、素材そのものが湯のなかにある点が違う。
精油せいゆ
蒸留や圧搾によって植物から得られる、水に溶けない揮発性の油。エッセンシャルオイルとも呼ばれる。
シラージSillage
香りが身につけた人のまわりにどれだけ届き、通ったあとにどれだけ残るかを指す言葉。日本語では拡散とも言う。飛びやすい分子が多いほど大きくなる。
送粉シンドロームそうふんシンドローム
花の色・開く時刻・形・匂いが、どの送粉者に向けて作られているかで一組にまとまって説明できるという見方。
三叉神経さんさしんけい
顔面の温度や痛みを担当する神経系で、鼻で受け取る刺激の一部を拾っている。ミントの冷たさ、唐辛子の刺すような感じ、アルコールのつんとくる刺激は、嗅覚受容体ではなくこちらが受け取っている。
シャシーChâssis
アンフルラージュで使う、精製した脂を両面に塗ったガラス板を収めた木枠。花はこの脂の上に一輪ずつ並べられ、毎朝新しいものに取り替えられる。作業場ではこれを何十枚も積み重ねて並べた。
熟成じゅくせい
瓶の中で時間が経つうちに香りの角が取れ、まとまりが良くなっていく変化を指す言い方。劣化とは別の現象ではなく、同じ瓶の中で同時に進む変化のうち、どの部分が変わったかで呼び分けている。
ステアロプテンStearoptene
精油に含まれる、常温で固体になる成分。ローズオットーが低い温度で白く濁り、やがて固まることがあるのは、花の蝋に由来するこの成分が結晶化しているためで、手で温めれば戻る。
スフマトゥーラSfumatura
半分に割った柑橘の果皮を海綿に押しつけ、破れた油胞からしみ出した油を吸わせて集める手作業の圧搾法。イタリア・カラブリアのベルガモットで長く使われてきた。
単離香料たんりこうりょう
天然の精油から特定の成分だけを取り出した香料。由来は天然だが、単一の分子として扱える点で精油とは性格が違う。
超臨界二酸化炭素抽出ちょうりんかいにさんかたんそちゅうしゅつ
圧力と温度をかけて気体でも液体でもない状態にした二酸化炭素を溶媒に使う抽出法。低い温度で扱えるうえ、圧力を下げれば二酸化炭素は気体に戻るので溶媒が残らない。
天然香料てんねんこうりょう
植物や動物に由来する素材から取り出した香料。同じ植物でも産地や気候、収穫の時期で組成が変わる。
動物性香料どうぶつせいこうりょう
動物に由来する香料。麝香・龍涎香・シベット・カストリウムが代表で、単体で嗅ぐと強く獣くさいが、極端に薄めると温かく体温に近い印象になる。
トップノートTop Note
つけてすぐに立ち上がり、短い時間で飛んでいく軽い分子が担う段階。柑橘やハーブの素材が置かれることが多い。
ドライダウンDrydown
軽い分子が飛んだあとに残る、香りの最後の段階。重い素材の性格がそのまま出る。
超臨界流体ちょうりんかいりゅうたい
ある温度と圧力の組み合わせ(臨界点)を超えて、気体と液体の区別が付かなくなった状態の物質。密度が液体に近いので物をよく溶かし、粘り気と表面張力が気体に近いので植物の細胞の隙間へ入り込む。
ノートNote
香りの構成要素、および揮発の段階を指す言葉。素材名(ローズノート)と時間帯(トップノート)の両方に使われるため、文脈で読み分ける。
発酵生産はっこうせいさん
酵母や細菌に糖を与え、目的の香気成分を作らせる方法。植物から抽出するのでも石油から合成するのでもない、三つ目の経路にあたる。
賦香率ふこうりつ
製品全体に対して香料の原液がどれくらい入っているかを示す割合。残りのほとんどはエタノールと少量の水である。
分子蒸留ぶんししょうりゅう
減圧して低い温度で沸かす蒸留。精油から特定の成分だけを濃縮したり、望ましくない成分を抜いたりできる。
フレグランスホイールFragrance Wheel
香調のファミリーを円環状に並べ、隣り合うものほど印象が近くなるように配置した図。どこで枠を切るかは作成者によって違う。
フロクマリンFurocoumarin
柑橘の果皮などに含まれる化合物の一群。ベルガモットに多いベルガプテンが代表格で、光毒性の原因になる。
プルースト効果プルーストこうか
匂いをきっかけに、忘れていた出来事の記憶が細部ごと立ち上がってくる現象の通称。マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の一場面にちなむ。
ベースノートBase Note
飛びにくい重い分子が担う、最後まで残る段階。樹脂・木・ムスク系の素材が置かれることが多い。
ヘッドスペース分析ヘッドスペースぶんせき
対象をガラスの器で覆い、そこに溜まった空気を吸着剤に集めて組成を調べる方法。花を摘まず、咲いたまま何が漂っているかを読める。
芳香蒸留水ほうこうじょうりゅうすい
蒸留のあと、精油と分かれて下に残る水の層。フローラルウォーターとも呼ばれ、水に溶けやすい香気成分を含む。
保留剤ほりゅうざい
香りの立ち方をゆるやかにし、全体を長く残すために加える素材。それ自体が強く香るとは限らない。
ポマードPommade
アンフルラージュで花の香りを吸わせた脂。ここからアルコールで香りを取り出す。
鼻先現象はなさきげんしょう
嗅いだ匂いを知っていると確信できるのに、その名前が出てこない状態。喉まで出かかった言葉の嗅覚版として研究者が呼んできた。選択肢を三つ与えられれば正解できることが多く、知識は頭の中にあって、そこへ届く道だけが細い。
吹き抜けふきぬけ
蒸留で、蒸気が素材の塊を避けて隙間だけを走り抜けてしまう現象。材料は釜に残っているのに、内側の素材には触れないまま蒸気が出ていくので、香りだけが採れない。
ミドルノートMiddle Note
トップが飛んだあとに中心となる段階。花や香辛料の素材が置かれることが多く、その香水の性格を決める部分にあたる。ハートノートとも呼ばれる。
ムエットMouillette
香りを試すための細長い紙。試香紙とも呼ぶ。
聞香もんこう
香を「嗅ぐ」ではなく「聞く」と言い表す、香道での香の味わい方。名前を当てる営みではなく、同じか違うかを聞き分ける営みを指す。
マセレーションMacération
脂を六十度ほどに温め、そこへ花を沈めて香りを移す抽出法。温浸法ともいう。冷たいままの脂で行うアンフルラージュ(冷浸法)とは、同じ「脂に吸わせる」原理でありながら、扱える花がまったく違う。
溶剤抽出ようざいちゅうしゅつ
揮発性の溶剤で素材を洗い、溶け出したものを集める抽出法。熱をほとんど加えないため、蒸留では香りが立たない素材や蒸留に耐えない素材も扱える。
油胞ゆほう
柑橘の果皮にある、香りの油が入った小さな袋。色のついた外皮(フラベド)にだけ並んでいて、内側の白い層(アルベド)にも果肉にも香りはほとんど無い。皮を折ったときに霧が飛ぶのは、この袋が破れているからである。
レイヤリングLayering
複数の香りを重ねてつけること。同じブランドのボディ製品と合わせる場合と、別の香水どうしを重ねる場合がある。
レジノイドResinoid
樹脂や苔のように乾いた素材を溶剤で抽出して得られる中間物。花から得るコンクリートに対応する呼び名である。
六国五味りっこくごみ
香木を六つの系統(六国)と、甘・酸・辛・鹹・苦の五つの味(五味)で表す香道の見立て。香りを味の語彙で言い表す点に特徴がある。
ワシントン条約わしんとんじょうやく
絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制する条約 (CITES)。香料の分野では 1970 年代以降にこの規制が入り、麝香をはじめとする動物由来の素材の商業利用の道がほとんど閉ざされた。
FCFエフシーエフ
Furocoumarin-Free(フロクマリン除去)の略。圧搾したあとに蒸留や吸着でフロクマリンを取り除いた柑橘の精油を指す。
GC-MSジーシーエムエス
ガスクロマトグラフで成分を分離し、質量分析計でそれぞれを同定する分析法。混合物に何がどれだけ入っているかを一覧にできる。
GC-Oジーシーオー
ガスクロマトグラフの出口を人が嗅ぎ、どの成分がどう香るかを対応づける方法。機器は何が入っているかを答えるが、どう香るかは答えないため、人を測定系に組み込む。
IFRAアイエフアールエー
国際香粧品香料協会 (International Fragrance Association)。香料の使い方について業界の基準を定め、素材ごとに使用量の上限や制限を示している。